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column 2011.11.9
 
稲村ヶ崎R事情
気持ちも家もシンプルに、作家の湘南リラックス生活
杉浦貴美子
 

今回の稲村ヶ崎R事情は、インタビュー形式でお送りします。 一昨年の初夏に、稲村ヶ崎R不動産(現 鎌倉R不動産)で一戸建てを購入された作家のよしもとばななさん。物件探しから現在の家との出会い、そしてこれからの暮らし方の可能性について語っていただきました。

3階ロフトから2階リビングを見下ろす。右がよしもとばななさん、左が造園家の遠山勉さん、中央が稲村R代表フジイ。この日は庭の植栽計画の打ち合わせでもありました。

大は小を兼ねない!

小説のなかでも『海のふた』『虹』『ハネムーン』など、海の情景が印象に残る作品も多いよしもとばななさん。描写される海は魅惑的で、ときに現実をも超えるような美しい世界へと広がっていきます。まずはじめに、よしもとさんを虜にした海の魅力について伺ってみました。

左:腰越海岸から江ノ島方面をのぞむ。どこまでも続く水平線、日ごとに違う表情を見せる海。 右:小坪漁港の風景。

──よしもとさんは海のどこに惹かれますか?

祖父が九州の天草で船大工の仕事をしていたからか、漁港が好きで。特に港に漁船が泊まっているムードに惹かれるんですね。父の代になって天草を引き払って東京に出てきたので故郷はないんですけど、親がそういう風景ばかり求めて旅をしていたので、自分のなかにしっかりと焼き付いていて。
だから私にとっては、たとえば葉山や逗子マリーナの白いヨットが優雅に泊まっている感じではなく、小坪や佐島の漁港に漁船が泊まっている風景の方がすとんと腑に落ちるんです。心のなかの港の風景というか、そう、自分のいる場所だなって思うんです。

──なかでも、湘南に家を探そうと思われた理由は?

湘南はもともと友達がたくさん住んでいて、その良さをじゅうぶん知っていたんですね。だからこっちで探すのはごく自然な流れでした。

──それで、稲村ヶ崎R不動産(現 鎌倉R不動産)にお問い合わせいただいたんですね。

そう、たしか決めるまでに15軒くらい見たでしょうか。バブリーなマンションや、ぼろぼろの古い戸建ても見ましたね。なかでも堀内のマンションはかなり理想に近かったんですが、ちょっと広すぎて決められなかった。あ、幽霊屋敷みたいなところにも行きましたね。

──「小坪トンネル」脇の物件ですね。あそこは古い方のトンネルの上に火葬場があるんですよ!

ああどうりで、怖かったですよね……あの雰囲気。

そうだ、極楽寺の一戸建もとてもよかったですね。でもあそこもちょっと広かった。これからまだ子どもをたくさん産まなくちゃいけないくらい(笑)。

──全体の小ささというか、間取りが細かく分かれていないところが、よしもとさんの選択のポイントでしたよね。大は小を兼ねるというわけではないんですか?

ゆくゆくはこっちで仕事もしようと考えていて一人で来る可能性もあるから、いくつも部屋があったらそこに誰かいそうで怖いんですよ!
それに、東京だと家族それぞれがばたばたしているから、こっちではみんなで揃ってひとつの部屋でゆっくりいられたら、思っていて。だから、空間がひとまとまりになっているところがよかったんですね。

「家のなかに電柱を立てていいかな?」

探すこと15軒余、ようやく出会えた物件は、吹き抜けの大きな窓から気持ちのよい光が差し込み、山を借景にのぞむ小ぶりな一軒家。広いリビングを家の中心に据えた、建築家が「自分が住みたい理想的な別荘」として実験的に建てた新築物件でした。

中央が「電柱」。丸太に角材を取り付け、その先に傘電球が吊り下げられている。右のタンスがきっかけとなった成田ヒロシさんの作品。成田さんは、絵画から立体の製作、自作詩の朗読ライヴなど幅広い活動を展開しているアーティスト。

──この家の決め手はなんでしたか?

一番は立地でしたね。海まで歩いていける距離というところと、友達の家に近いところ。
建物はやっぱり空間がひとまとまりになっている、この間取りがよかったです。実験的に建てたというだけあって、住むことだけを考えてつくっているのではない感じもよかった。くつろいだり、人を呼んだりするのにぴったりだったんですね。なので、見に来てすぐに決めました。

──契約されてから入居までの間に、家のなかに少し改装を加えたそうですが。

照明が足りていなくて薄暗かったのと、手すりがそのままだとちょっと危なくて。で、どうせ付けるんだったら楽しい方がいいねって、照明と手すりに付ける柵の内装を、アーティストの成田ヒロシさんにお願いしたんです。もともと成田さんの作られたタンスを家の中心に置くつもりだったので、そのイメージで。
はじめに成田さんが「家のなかに電柱を立てていいかな?」ってアイデアを話されたとき、なんのことを言っているのかよく分からなかったんですよ(笑)。工事が終わってみて「なるほど、これは電柱だ!」と。家の外観から、おしゃれな雰囲気を想像して来る方にはがっかりされちゃうんですが。

──(一同、口々に)いやいや、この「電柱」は素晴らしいですよ!

私たち家族もとても気に入ってます。存在自体がほっとしますよね。

3階ロフト。左の扉は奥の深い収納。各階の手すりが金属の枠のみで生活するのに危険だったため、間に木の板を3枚張って柵とした。こちらも成田さんの手によるもの。

床で電柱を支えるのは、一回り大きい輪切り丸太。成田ヒロシさんのHPはこちら。

1階玄関から左手奥の居室をのぞむ。気持ちのよい光が差し込む。

──そもそも、なぜ「買う」という選択だったのですか?

東京の自宅も事務所も借りているので、ここは買って長く付き合おうと。「今、なにかを残しておかないと」と思ったからかもしれません。その後震災があって、やはり買っておいてよかったと思いました。とりあえず体ひとつで来られる場所があるから。

──そうなんですよね。震災後、シェルター的な役割を求めて探される方も増えました。

二拠点あれば、避難して来られた方を泊めることもできますよね。この家にはベッドを置かず、布団を敷いて何人でも雑魚寝できるようにして、遠くの親類や友達がいつ訪れてもウェルカムな状態にしています。

「ニュートラル」に暮らす

当初は、湘南に拠点を移すつもりだったというよしもとさん。購入後、諸事情により計画を変更し、東京に主な拠点を残すことに。現在、湘南には月に2、3回、家族やペットと、ときには友人とともに週末を過ごされています。

今回、よしもとさんは「よろこびの庭 造園設計事務所」の遠山勉さんにお願いし、庭の植栽計画を立てることに。

──引っ越しから2年、この家での暮らしはいかがですか?

シンプルでいいです。まだちゃんと越してこないのであれば、できるだけなにも置かないことにしよう、と最初に決めたんですね。テレビもないから物音もしなくていい。冷蔵庫も小さなものにしたから、買い物も少なめに抑えられる。電気釜も置かない。それが意外によかったんです。今となってみれば、この家とはこういったゆっくりとした付き合い方でよかったな、と思っています。

──よしもとさんにとって「家」という存在はどんなものなんでしょう?

まだ全然定まってないです。私にとって、家はそんなに一生懸命にならないもので、「雨風がしのげればいいや」って感じなんですね。ホテルみたいな「ニュートラル」な空間が好きで、この家もそんな感じであってほしいんです。

家に過剰な思い入れがない方が私にとっては幸せ。家を買うことや住むこと自体が目的になってしまわない方がいいなって思うんです。その気持ちも分かるんだけど、それだけだと苦しくなっちゃう。なんかゆるい感じがないと人間ってやっぱりつらい気がして。

──これからのこの家との付き合い方は?

それこそ、ゆるく長く付き合っていきたいですね。これから遠山さんにもお願いして、こつこつと庭も豊かにしていく予定。この先湘南に拠点を移すときも、都内には事務所を残すか、小さい部屋を借りるかして、バランスを変えるという感じでしょうか。春はここ、夏はこことか、シーズンごとに変えて、片方は置いておくとかできたらいいな。

遠山さんによる庭のデザイン画。よしもとさん希望の南国テイストで、年数をかけてじっくりと庭を豊かにしていく予定。

──R不動産でもトライアルステイという企画をしていて。そこから一歩踏み込んで「生活する感覚で旅をする」ような、自分の住む場所をどんどん変えていったりする、そんな暮らし方もできるんじゃないかと、今考えているんです。それついてどう思われますか?

そうですね、不可能ではないと思います。車もシェアするように、家もそうなったらいいですね。

──最後に、R不動産で物件を探している人にメッセージをいただけたら。

物件のイメージをはっきり持って「これだけは譲れない!」という線を引く、そしてそれを崩さないで探す事ですね。途中何回もくじけそうになると思うけど、ムードに流されないこと。あと大事なのは、自分のスキルをみつめて。たとえば私だったら、手が不器用なので自分で修繕しながら暮らす、とかはできない。そういった、それぞれの持つ特質をはっきりさせて、無理せずに家探しと向き合えたらよいのかな、と思います。

房総R不動産トライアルステイ」で滞在することができる物件リスト。気になるエリアで、家具付きの家に期間限定で暮らしてみる試み。稲村ヶ崎R不動産(現 鎌倉R不動産)でもこれからはじめる予定。 

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