住宅 | ||||||||||||||||||||
森を育む家 |
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【価格変更しました】 この家を訪れた時に感じたことが2つあります。建っている家がどんなに素敵だとしても周囲の環境との関係性でその魅力はいかようにも変わるということ。そして、自然の中で暮らすということは、天からの恵みを享受するだけではなくて、住み手が手間ひまをかけて大地を育てていくことでもあるんだということ。オーナーはこの土地に出会った時から、そんなことを考えていたんじゃないかなと思いました。 約900坪以上の広大な敷地(というより森)を見おろすように建つ平屋。焼き杉板のサイディングとガルバリウム鋼板の黒い屋根が周囲の緑によく映えています。そこからは遠く相模湾とその先に続く逗子や葉山まで見渡せました。鎌倉、逗子、葉山の花火大会や、日の出も綺麗に見えるということで知る人ぞ知る鑑賞スポットとなっているそうです。 設計したのは建築家で住宅作家の泉幸甫(いずみこうすけ)氏。どのような建築を造るかよりも、むしろどのように建築を造るかというプロセスに重点をおいて、住み手が快適に過ごせる住空間を意識しながら多くの住宅を手がけています。オーナー自らが何人もの建築家と工務店に相談して、ようやくたどり着いたのが泉氏だったそうです。 土地は広大ですが、全域が市街化調整区域のため建築可能な敷地は限られていました。そんな制限がある中でオーナーのこだわりを形にしたのがこの家です。 まず入って驚くのが天井の複雑な構造。勾配天井に化粧垂木が単に平行に並ぶのではなく、角度に応じて垂木の組み込みが緻密に計算されています。木材は収縮の少ない天然乾燥したものを静岡県浜松市の木材店から仕入れているそうです。真ん中をスーっと走る棟木には梁材が入っておらず、下には支える柱もありません。 天井は高いところで約3.7mと相当な高さとなり、床面積以上の空間の広がりとワイドな間口を実現しています。高台に建つ旅館のロビーへ入った瞬間の感動にも似た感覚は、細かく見ていくとたくさんの技巧によって創りあげられたものでした。眺望ももちろん素敵ですが、個人的にはこの天井を寝転んだままずっと眺めていたいと思いました。 掃き出し窓から外に出ると、フロアを拡張したようにウッドデッキが家をとり囲んでいます。その上を覆う軒は軒先まで約1.2mと多少の雨が降っても雨宿りできそうな長さ。壁は左官職人による手仕事、ドアには柿渋で染められた和紙が貼られています。どこを切り取っても気持ちのいい仕上げです。 さて、そんな家の建つ敷地のほとんどは草木の生い茂った森。窓からの眺望を考えて伸びきった枝を刈ったり、家の近くで家庭菜園をするくらいなら誰でも思いつきそうですが、オーナーには温めていた壮大な計画がありました。少年のようなキラキラした目で僕に語ってくださいました。 まず、オーナー自ら森の中に道を築いて敷地の下まで行けるようにしました。途中私道を通る必要があるものの、稲村ヶ崎小学校や極楽寺駅へのアクセスが可能になりました。今では子供達のエキサイティングな通学路となっています。 そして南東に開けた緩い斜面を段々畑にしてエリア毎に果樹園、野菜畑、椎茸栽培や鶏小屋、ヤギ小屋、手作り遊具ゾーンまで計画していました。果樹や野菜は実がなったものもあれば、上手くいかなかったものもあります。今のところ構想でストップしているものも。 それでも時間をかけて手を入れてきた軌跡はいたるところで目にすることができるのです。見せていただいた構想マップはおそらく子供達と一緒に考えたものでしょう。オーナーの宝物に違いありません。 敷地には幹の直径が3m以上はありそうな巨大なクスノキもそびえ立っています。なんとなくこの森全体を守ってくれているような厳かな雰囲気が漂っていて、この土地のパワーを感じとることができました。これも森を敷地に持つ特権なのでしょう。 今回ライフステージの変化や、この土地で培ったノウハウを別の形で実践するために、より自然豊かな土地を求めて鎌倉を離れることを決心されました。 想いがつまった家と道半ばの森を引き継いでアップデートしてくださる方にお届けできれば。 ※当物件は市街化調整区域にあるため、原則建築物の建築はできません。但し、現在の建物は建築確認を受けて建築物を建築した土地であるため、建築確認の取得の他、都市計画法の許可等が得られれば既存宅地として住宅の建築が可能との見解を得ています。 |
リビング|ここで寝転んでずっと天井を眺めていたい |
天井|スッと横に走る棟木。そこから伸びる化粧垂木。かっこいい。 |
リビングからの眺望|敷地の森と相模湾が望めます(売主提供) |
外観|焼き杉板のサイディングとガルバリウム鋼板の黒いボディが森に馴染んでいます |