価格：

3,580万円

面積：

87.59㎡（建物）
165.29㎡（敷地）

満開の梅。灯油ストーブの上でシュンシュンと音をたてるヤカン。木漏れ日の中で庭を眺める時間は時が止まったかのようでした。

築65年の木造住宅は、「古民家」というより、「レトロ」という言葉が似合う気がします。「古民家」が、太い剥き出しの梁のような力強さを感じさせるとすれば、「レトロ」は花柄模様の家電のような、洗練されすぎない装飾性や、愛らしさではないかと。

取手や枠に細かな装飾のある木の建具や家具。照明にほどこされた植物柄。模様入りガラスなど。この家に散りばめられたディテールは、これぞ昭和レトロという感じがします。

「稲村ヶ崎」駅から徒歩6分。谷あいの、かろうじて車が通れるほどの細い道沿い。鮮やかに梅が花開く場所にこの家はあります。

赤茶色に塗られた木の外壁は、周辺の景色に溶け込んでいます。ぱっと目を引く緑色の玄関ドアの脇には小さな縁側。昭和を舞台にした映画セットの中に入り込んだような感覚に陥ります。

中庭を囲んでL形をしている建物のほとんどの部屋から、梅の木が見える間取りです。道路を挟み南側に小高い緑地の斜面が迫っているため、日当たりは午前中の方が良いですが、2階は午後でも日差しが入ってきていました。

1階の居間も窓が多く明るく、板張りの床と天井が落ち着きます。ユニークなのは、かつてカフェを営んでいた名残の旧厨房スペースがあり、住居兼カフェなどを考えている方にはちょっと嬉しいかもしれません。

私がすごくいいなと思ったのが、台所。昭和の作りにしては幅広で使いやすそう。作り付けの食器棚もしっくり馴染んでいます。ダイニングテーブルを囲む家族の姿が目に見えるようです。

レトロと言えば合わせて考えなくてはならないのは痛みや設備の古さですが、現在まで手を入れながら住み継がれているだけはあります。ほぼ手を入れなくても住み始められるのではと感じましたが、その点はぜひ現地でご確認を。風呂、トイレは更新しても良いかもしれません。

レトロを辞書でひくと、「懐古趣味。古き良きものを懐かしみ、愛好する事を指す」とのこと。住まうなら、懐かしむだけでなく、たくましくしなやかに今の感覚で住みこなしてもらえたら。庭の梅は今も昔も鮮やかです。