賃料：

22万5,000円

面積：

43.06㎡

拝啓、100年後の君へ。名前も顔も好きな食べ物さえも知らないけれど、この辻堂という地で暮らしている君へ。今そちらの風景はどんな風ですか。田畑が広がり樹々がすくすくと成長し、蛙と蝉の合唱や鳥のさえずりは聴こえていますか。

そんな未来の町の姿を想い描きながら、小さな集落をつくって住人と一緒に育てていく。この場所は、辻堂に暮らす未来の誰かに宛てたオーナーからのラブレターなんじゃないかと思うのです。

藤沢市辻堂といえば、いわゆる湘南エリアでも人気の高い移住先。駅前には大型ショッピングセンターのテラスモール湘南があり、蔦屋書店の運営する湘南T-SITE、南側には辻堂海岸、辻堂海浜公園などなど、平日や休日を過ごすのに事欠かないスポットがたくさんあります。駅前には高層マンションまで。

一般的な視点で見れば、都心から少し離れた自然が近い移住先としては全く申し分ありません。でも、開発で森が消え、畑が住宅に変わり、広い土地はマンションになっていくという、ここ数十年の変遷によって、他の町と変わらない風景になってしまいつつあることに、この町で育ったオーナーは寂しさと危機感を感じていたそうです。

昔の辻堂は畑が広がり海が近いこともあって、住民の多くが、自分たちで育てた野菜や漁で獲った季節の旬のモノを食す半農半漁スタイルでした。地産地消の重要性が叫ばれる前から、当たり前にそこにあったいのちと向き合う暮らしの営み。そんな風景を未来に残していきたいという想いから、オーナーの集落づくりプロジェクトはスタートしました。プロジェクトの詳細はこちらの記事からどうぞ。

辻堂駅から南に徒歩13分。住宅街の中に突如として現れる空間には、常緑樹や落葉樹が植栽され、あまり聞き慣れない「微生物舗装」されたというふかふかした地面が広がり、その中に無垢材で建てられた家が肩を寄せ合うように建っています。

今回ご紹介するのは第一期（久根下）の1区画。計4区画の戸建とメゾネットタイプの3区画、オーナーの母屋と離れを含めた合計9区画の集落のような場所で、平屋を改装したコモンスペースも。共有の屋外スペースでは、住人が寛いだり子供たち同士が遊ぶ元気な声が聞こえてきたり、庭や畑の手入れをしたり、ときには住人が集まってきて夕食会を開催したりしています。第二期（出口）はここから徒歩3分にある計3区画の長屋タイプ。

住人や友人もコモンスペースの利用は可能ですし、夕食会やイベントの参加も大歓迎です。ぜひ第一期だけでなく第二期の住人とも交流を深めていただければ。辻堂で楽しく暮らすヒントを教えてくれるかもしれません。

神奈川県産の無垢材をふんだんに使った平屋は、開口部の多さや吹き抜け部分も相まって平米数以上の広さを感じます。土間にはキッチンがあり、家の前にある畑で収穫した野菜や釣った魚をすぐに調理したり、ふらっと来た人と料理をつまみながら会話が弾みそうな空間です。遊び盛りの子供達が、庭と家の中をぐるぐる走り回り、それを大人が追いかけて回るという楽しそうな光景も目に浮かびます。正面や隣の区画との間には柵もありません。家の内にも外にも開いたつながり重視の設計となっています。

居間と個室を引き戸で仕切る事はできますが、天井部分はオープンになっているので隣の気配や料理の匂いもしっかりと伝わってきます。上には約14平米のロフトもあるので、ここを寝室として利用してもいいかもしれません。室内は外気を利用した「びおソーラー」システムで夏はひんやりした空気を、冬は暖かい空気を床下に取り込んで快適性を高める工夫も。

共有の屋外スペースには、伐採予定だった樹木をレスキューして植栽した広葉樹が青々と生い繁り、空間を優しく包み込んでくれる緑のベールに。5年後、10年後、さらに先の彼らの成長が楽しみです。

生き物にも人間にも環境にも優しい場所にしたいというオーナーの想いが詰まっているから、パーマカルチャーやサーキュラーエコノミー、そしてコミュニティデザインという言葉を知らなくても、なんだか気持ちいいよね、と納得してしまう、そんな空間でした。

単に辻堂エリアに移住したいという方よりは、新しい暮らし方にチャレンジしてみたい、地域と繋がりたい、何かやりたいけどモヤモヤしてどうしたらいいかわからない、そんな人に向いているかもしれません。暮らしと向き合うきっかけになれば。

※写真はオーナー提供です