価格：

9,200万円

面積：

62.93㎡（建物）
273.67㎡（敷地）

鎌倉の緑豊かな高台。
少し息を切らしながら階段を登ると、そこに現れるのは小さな平屋と小さな離れ。まるで木々の間にそっとつくられた“巣”のような住まいです。

約19坪ほどの平屋は片流れの屋根に淡いグレーの外壁。内装は珪藻土の壁。床はあえてモルタル、杉材の天井。LDKには仕切りがなく、段差だけで空間を分けています。この家のために特注した大きな玄関扉を開けると目の前にダイニングテーブルあり、その背後にオープンなキッチン。まるでカフェやビストロのような洒落たつくりです。

ダイニングスペースは薪ストーブが据えられ、冬はやわらかな炎が家全体を包み込みます。煮込み料理の香りや、湯気の立つポット。そんな光景が日常にあります。

庭に面した大きな木製サッシ以外の窓はあえて大きくせず、目線よりも高く配置して自然の光をやわらかく受け入れるようになっています。庭側の窓を全開にすれば、リビングと庭がひとつに。風と光が自由に通り抜け開放感に包まれます。

経年変化を楽しめるアイアンの飾り棚や、モロッコタイルを貼った玄関ポーチ、青を刺し色にした玄関扉。造作家具の細部には、オーナーのこだわりとセンスが宿っています。それは完成された内装というより、暮らしながらインテリアや雑貨で飾り、色を付けていくキャンバスのようです。

庭に小さな2階建の離れ。LDKに納戸、シャワー、トイレを備えた簡素な造りですが、アトリエやワークスペース、ゲストハウスとしても十分に機能します。外壁は経年によって味わいを増しており、この場所でひっそりと巣にこもる時間がつくれそうです。

敷地は約82坪。住宅が点在するエリアながら、近隣の視線を気にせず過ごせる立地。
前面道路は車が入れないため、騒音がなく静かな環境です。近くに2台分の駐車場を借りており、暮らしやすさも確保されています。

庭に出れば、木々のざわめきと鳥の声。ここでは季節の変化が、生活のリズムそのもの。
朝の光、午後の影、夜はストーブの炎のゆらめき。時間の移ろいが一番の贅沢になります。

静かに、ぬくもりのある時間を紡ぐための場所は、鳥の世界でも、巣を別の鳥が再利用することがあるといいます。この家もまた、そんな巣のように、静かに誰かの暮らしを受け継いでいくのでしょう。

※写真はオーナー提供です