価格：

4,300万円

面積：

100.61㎡（建物）
775.32㎡（敷地）

アプローチを進むと草木の間から突然現れる赤い屋根の建物。そのファサードは、一瞬たじろいでしまうような気高い雰囲気がありました。

鎌倉山のバス通りから1本脇に入った場所。袋小路の終わりにある敷地、しかも通りからは見えない位置に建物が配置されているため、こんな素敵な建物があるなんて近隣の方にもあまり知られていないかもしれません。

通りから進んでいくと、見えてくるのはアプローチの外構部分。雑多に見えて、草花の配置も考えたのではと思うような雰囲気があります。その先には草原と言ってもよさそうな広さの庭。

そちらに目を奪われながら進み、、、

何気ない気持ちで横を見ると、急に洋館とも呼べそうな建物のファサードが目に飛び込んでくるのです。木々に隠れて獲物が来るのを待っていたハンターとでも言えばいいのでしょうか。こちらをじっと見ているかのような迫力があります。

一瞬おじけづくような気持ちになるのは、建物自体に気品さがあるからかもしれません。200坪以上の敷地にゆとりを持って建てられた住まいは、二つの切妻屋根が横に連なったような形。過去に増築がなされたようですが、屋根や外壁など、自然な納まりをしているのは良い設計者、施工者が関わった証でしょう。

白い外壁に縦横に通った付柱、付貫の濃い茶色が見た目の良いアクセント。これらの部材は、柱や梁といった構造体のように見せていますが、実はただの意匠として取り付けられることがほとんど。でもこれがあるから外壁が白一色ののっぺりとした雰囲気にならずに済んでいるんです。費用も手間もかけてこういった部材を取り付ける。新築当時のオーナーの心意気を感じます。

敷地の静かな環境も建物の良さを引き立てているのかもしれません。西側に張り出した大きな軒下に立って広い庭を眺めれば、どこか遠い里山のお屋敷に来たような気分になります。

今は写真をお見せすることは出来ませんが、内部も凝ったつくりになっています。敷地の段差を生かしたスキップフロアに、天窓の付いた勾配天井。外観に負けじと内部も見どころにあふれています。

数年は空いていたようで、水まわり等の内装の更新、少なくとも一カ所は分かっている雨漏りの補修は必要ですが、建物自体はまだまだ現役。今は次の住み手を迎えるために残置物の撤去が進められています。

気高ささえ感じるこちらの敷地と建物ですが、再建築不可という条件になっています。バス通りから敷地に続く通路は、車もゆったり通れる幅がありますが、建築基準法上の道路ではありません。そのため、こちらの敷地での再建築は出来ません。

しかし、それゆえに、いつまでもこのままであり続けなければいけない、孤高の建築のようにも感じられます。

鎌倉山で赤い帽子を被った気高き狩人が、息を潜めて次の住み手を捕えようと待っています。その縄張りに一緒に恐る恐る飛び込んでみませんか。