価格：

2,400万円

面積：

696.88㎡（土地）

もしもこの場所に記憶というものがあるのなら、約850年前にどんな舞いが披露され、周りの武士達がどんな表情で見ていたのか、こっそり聞いてみたいと思いました。

ここは神奈川県の南西部にある真鶴町。静岡県との県境となる湯河原町の隣といえば、なんとなくのイメージができるでしょうか。みかん畑が点在するなだらかな丘陵地帯、その先にニョキっと突き出た真鶴半島には「お林」と呼ばれる貴重な保安林が残され、半島の付け根にすり鉢状の街並みが広がっています。

この町には「美の基準」という町の風景を守っていくためのルールがあります。ユニークなのは、それが数値化されたものではなくて8つの基準に紐づいた69のキーワードに集約されていて、子どもにもわかりやすい言葉で表現されていること。例えば「眺める場所」というキーワードには、半島と海が広がる眺望は町の財産だから、私有地であっても独り占めするのではなくて少しだけでもその眺めを訪れる人々に公開してほしい、という願いが込められています。他にも「夜光虫」や「聖なる所」など気になるキーワードが散りばめられていて、真鶴町の場所や風景に対するリスペクトと、それを後世に残していこうという強い想いを感じます。まちづくり条例や施行規則はあるものの、美の基準自体は強制するものではないし、誰もが参加して追加や修正していくことができるというのも軽やかで心地いい。

そんな町にある物件は「謡い坂（うたいざか）」という史跡のすぐそば。実はここ、源頼朝ゆかりの地なんだそうです。石橋山の戦いから逃れてここまで辿り着いた頼朝一行は既にヘトヘト。そこで家臣の1人がみんなを元気づけるために舞い謡った場所がこの辺りなんだとか。そのおかげもあってか、すぐ近くの岩海岸から無事に脱出して房総へ渡り、のちに鎌倉幕府が誕生することになります。頼朝は鎌倉R不動産にとって、ある意味で地元の大先輩。そんな先輩が意気消沈している中、腰を下ろして舞いを眺めていたかもしれない土地が今回の物件です。個人的にこれは胸熱エピソードでした。

海に向かって緩やかに斜面となっている土地には、大きい三角屋根に赤い外壁が特徴の家が建っています。建物と土地のオーナーは同じですが、今回の募集は家が建っていない方の約700平米の土地。前面道路から見ると擁壁で囲まれていてあまり全体が見えませんが、東向きの広い土地には3m〜8mくらいの常緑樹や落葉樹、柑橘系の木に実がついているものまでありました。1階の目線だと海は望めないかもしれませんが、2階からならしっかり拝めるのではないかと想像できます。

さて、この土地にどんな建物を建てましょう。用途地域は第1種中高層住居専用地域なので、制限の中で事業用の建物も建てることが可能です。地元の人や町を訪れる人が集うカフェレストラン、もしくはこのエリアで活躍する作家さんの手仕事を展示するギャラリーと、親子でモノづくりに参加できるアトリエに。そして、たまに地元の人たちの踊りや謡を披露する場として。そんなふうに人が集まる場所になったら素敵だろうなとも思ったり。もし個人の家を建てるなら、西側道路寄りに小さく建てつつ北東方面に大きく開口をとり海を楽しみたい。庭を地域に開いてパーマカルチャーのちょっとした実験場にしてみる、というのもこの敷地の広さなら実践できるはずです。

元々は、隣の大きな屋根の家も含めて小松石の石材業で財を成した方が所有していました。岩海岸に向かう坂の途中に建つ家はこの辺りのランドマーク的存在だったとか。今のオーナーが物件を購入した時にも庭の活用で色んな妄想をしていたそうですが、当時から方向性が変わってきたため、今回、庭の半分だけを売却するという形になりました。

「美の基準」のキーワードを参考にしながら、地域の人、町を訪れる人、そしてこの場所の記憶に残るような活用をしてくださる方にお届けできれば。

※注意点としてはインフラ設備のない土地なので、給水管や電気の引き込み、浄化槽の設置、また東側の道路は42条2項道路のためセットバックが必要です。