賃料：

22万円 (税込)

面積：

33.43㎡

お寺近くというワードで連想する店としては、抹茶や和菓子、蕎麦や懐石料理あたりでしょうか。ただ今回の物件からはそんなイメージがあまり湧きませんでした。どちらかというと地元の人たちが集まるパブのような場所。ワイワイと賑やかな時もあれば、フラッと立ち寄ってビールを1杯だけ頼んでチビチビやりつつ、常連客たちと世間話したり新聞を広げて今の情勢と睨めっこする、そんな光景が思い浮かびました。

中世ヨーロッパでは教会でビール醸造をしていたという歴史もあり、教会とビールというのはわりと馴染みがあるようです。日本でも神社に日本酒を奉納する文化があるように、酒と神や仏の繋がりは案外と万国共通なのかもしれません。それならば、鎌倉五山の建長寺や円覚寺をはじめとする寺が点在する北鎌倉の山ノ内にパブがあるというのもさほどヘンテコな発想ではないはず。

さて、店内は木と土間のシンプルな仕上げ。もちろん、ここから手を加えていただいて構いませんが、少し山小屋っぽい雰囲気はそのまま残すのもありだと思います。その分、店の顔となるであろう正面の造作カウンターは濃い色あいのチークやウォルナットなど材にこだわりたいものです。壁沿いにはヴィンテージの黒い皮張りベンチソファとテーブルのかわりに少し背の高い酒樽をいくつか。棚にはウィスキーやらリキュールやら色とりどりの瓶を並べれば、そこはもうアイルランドの片田舎にあるようなパブ空間です。

現状は天井高2,900mmとパブには少し高めな印象なので、もう少しおこもり感を演出しつつ、そしてケルト音楽に乗せて足でリズムを刻んだ時心地よいように、ダークめのフローリングを張って天高を抑えても良いかもしれません。嬉しいことに、床張り工事はオーナーが費用負担してくれるということです。

店で人気なのは少しビターな飲み口の黒ビール。のどごしよりも舌の上で時間をかけて味わうタイプ。1杯くらいなら昼から飲んでも罪悪感は少ないかと。看板料理のフィッシュ&チップスは、ヒタヒタになるまでビネガーをかけまくって食べるのがこの店の通の食べ方。そんな常連さん達に長く愛されるような店に入ってほしいと思います。

実は、国道を挟んで向かいにビーフシチューの人気店だった去来庵があります（現在休業中）。オープン当時は、昭和初期の美しい伝統建築とビーフシチューという組合せにギャップを感じる人もいたかもしれませんが、行列が絶えない店となり、鎌倉で古民家と西洋文化を掛け合わせた先駆け的存在でした。

もちろんパブ限定物件ではありません。ぜひ寺の近くだからという固定観念を捨てて、自由な発想でチャレンジしてみてください。