2024.9.1 |
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地域材を学びながらつかう【連載第2回】
鎌倉R不動産で「地域材を学びながらつかう」ことについてコラムを書くことにしました。第2回は、南足柄の森の現地での話。
コラムの第1回もぜひご覧ください。
南足柄の森
「株式会社あしがら森の会議」とのオンラインミーティング(第1回コラム参照)から数週間後の7月頭に、南足柄の森へ行ってきました。梅雨が明けずに天気がずっと心配だったけど、この日はみごとに快晴。鎌倉からは134号で海沿いをずっと走り、茅ヶ崎から高速に。そしてしばらく走るとどんどんと緑が深くなり、大井松田ICを降りて山が近くなってくる。
あしがら森の会議のみなさんとの待ち合わせは、「地域交流地点mado.」。ここは、あしがら森の会議が運営する、古民家を改装したレンタルスペース。私たちは午後はここで仕事をさせてもらうことに。森の近くで、いつもとは違う環境で仕事をするのも、この日のもう一つの楽しみに。普段は、近隣の方々が集まって一緒に料理をしたり、ワークショップを開催したり、そんな使われ方もされているそうです。
「地域交流地点mado.」たまにはこのような場所でみんなで仕事をするのもおすすめです。
さて、ここから車で山に向かう。一般道を進み山に入り、途中で施錠されたゲートから林道にはいる。ここからが、あしがら森の会議が管理受託している森。20分ほどで、最初に案内していただく間伐をおこなう場所へ。現地では、伐倒や森の手入れを実際におこなわれている林業家さんたちが待っていてくれた。ちなみに、途中の林道は、数日前の風雨などで大きめの枝葉や落石などがところどころあったのだけど、危険なものは林業家さんたちが事前に除けてくれたそう。これから案内いただく時間も含めて、本当にありがたい。
みんなで林道から山の中へ少し歩いて進む。ヒノキの木々が立ち並び、このあたりは植えられてから60年ほど経った人工林。「ここにこれから、間伐材を林道まで運び出すための道をつくります」、そう説明いただきながら歩く。その道をどこにどう作るかが、林業家さんの経験に頼られているとのこと。道をつくれそうな地形の場所で、このあたりの木々にとって風が当たりすぎないように、つくっていく。また、このあたりの土には、スコリアと呼ばれる富士山の火山灰が混ざっており、崩れやすいそう。保安林にも指定されているし、水源の涵養や土砂の崩壊なども当然ながら考えないといけない。
林業家さんが決めた道をつくる場所。目印に一部の木にはテープが。
道をつくり、晩秋頃に間伐する。木が水分を吸わなくなり、伐倒に適した時期だからだ。間伐の主な目的は、木が育ち混みあってきたところを適切に間引くことで、太陽の光が地面に届く割合を調節し、木々の間隔を保って木が太く育つようにすること。そうして間伐された原木が加工されて、間伐材として建築や家具などの材料として流通する。
「ここでは20%の間伐を目安にしている」
間伐の説明のときに、強い想いを感じたひとつの話。立っている木々全ての40%ほどを間伐するなど、林業をされている森によっては方針は様々だ。そして、当然、たくさん間伐すれば、多くの原木を一度に出荷できて、商売としては効率的である。一方で、過度の間伐をすると残った木への負担が大きい。ここでは、「この森を次世代につないでいくこと」を一番に考えた結果、「20%の間伐」があしがら森の会議の答えになった。
また、建機が通る道をつくる時も、建機がギリギリ通れる2mほどの幅にして、道に沿う木は伐倒せずに残す。道幅以上に木を切ってしまうと、風が通りすぎてしまって、その周辺の木が揺れすぎてしまう。木が揺れすぎると、木の繊維が切れる「もめ」ができてしまい、木材として製材できなくなってしまう恐れがある。そのようなことも考えながら、森の中に道をつくっている。
建機が通る道。道の両端ギリギリには木を残す。
これだけの想いをもって、丁寧に森と木々を育てていることは、間伐された1本1本の原木の品質にも反映されているであろう。でも、ここでこの地域が抱えている問題である、「虫に食われて品質が悪いことで知られている」という現実に直面する。スギノアカネトラカミキリというカミキリ虫がその原因だ。日本で林業が営われている森で、そのカミキリ虫が住みついている森と、そうではない森、というように林業関係者の中では選別されているらしい。ここは「住みついている森」になってしまっている。
実際に森に入ってキョロキョロして見ていたが、その虫を見かけるかというと、そういうわけではない。だから、木を1本1本見ても、食われているかどうか分からない。製材所で製材した段階で、はじめて目にすることになる。つまり、「虫に食われているかもしれない」ということで、この地域の材は原木の市場で評価されていないのだ。
間伐予定の場所の木々をみんなで見てまわる
「この森を次世代につないでいくこと」のために、一度にたくさん間伐をして流通させることはしない。でも、1本1本を高く評価してくれるわけでもない。そんなジレンマを抱えながら、あしがら森の会議は6次産業化などを考えながら、持続可能な仕組みづくりに奔走されている。
森には予定以上に長居してしまった。あしがら森の会議の人たちや林業家さんたちが、「次世代にこの森をしっかり残していくこと」を真剣に考えて、日々手を動かして森を管理されている。そのようなことが、私たちのお客さんにももっと伝わるといいな。新築や改装などで木の内装材などを真剣に選ばれているときに、一つの選択肢になるようにもっと伝わっていくといいな。そんなことを考えさせられた、林業家さんたちとの時間だった。
さて、森からいったん「地域交流地点mado.」へ戻り、お昼休憩。そしてその後は、歩いてすぐ近くの製材所へ。
>>第3回へ続く