湘南・鎌倉・逗子葉山エリアに住んでいる鎌倉R不動産のスタッフが、自分の住むまちについて紹介します。第4回は湘南茅ヶ崎エリアです。
茅ヶ崎のサザンビーチ。茅ヶ崎の海の見え方と言えば、烏帽子岩と江ノ島
今回は、営業スタッフのtoriiが住む湘南・茅ヶ崎エリアをご紹介します。20代の頃には湘南の鵠沼海岸に住み、サーフィン三昧だったというtorii。今の自宅がある茅ヶ崎にはどのような経緯で住むことになったのでしょうか。
鎌倉R不動産(以下「鎌倉R」):いつから居住していますか?
torii:2016年秋から住んでいます。当時僕は、自然素材で家を造る工務店に務めており、建築まっしぐらに生きて来ました。自宅は土地から探し、新築を自分(自社)で建てました。
自宅は自然素材で建てた。和紙の雰囲気が気に入っているという自宅のダイニング
鎌倉R:なぜ、このエリアに住もうと思いましたか?
torii:妻が茅ヶ崎出身だった事からこのエリアに決めていました。でも住まい方というか、家を考え始めた当初は、予算的に一戸建ては無理かなと思っていました。
当時はまだ賃貸で改装できる物件もそう多くはなく、マンションを改装して住もうかと家族で話しをしていましたが、やはり建築畑にいた身としては賃貸より自分でいろいろやりたいし、できれば新築を造りたい!と強く思っていました。
茅ヶ崎は、その当時東洋一のサナトリウムといわれた「南湖院」や、企業の保養所があるなど、別荘地、療養地として昔から愛されてきたまちです。一年を通じて温暖で風通しの良い良好な気候であることが好まれたのだと思います。
旧南湖院第一病舎(国登録有形文化財)
torii:そのため、国土地理院などの航空地図を見てみると、敷地の広さにゆとりある家が多く、海側の立地であっても敷地内の緑の量が現在とは比較にならないほど差があります。鎌倉は現在の家々の密集度と1970年ころとはあまり変化を感じませんが、茅ヶ崎については正直別世界です。
南湖院の敷地内プール。現在はサナトリウムではなく、敷地内は見学することもできる
torii:ただ、茅ヶ崎は近年開発が激しいものの、もともとは戦火をのがれ大小さまざまな土地が継承されてきました。実際、まち歩きをしていて雰囲気のいい道だな~なんてぼんやり歩いていたら、それはひと様の敷地だった!なんてこともしばしばです。
そのようなまちの中で、誰も買わずに売れ残っていた小さめの土地を取得することに。マンションを買って数百万円の改修工事をするよりも、手頃な土地に自分の考えた家を建てる方が、僕や家族にとって遥かに幸せかも、と考え家造りをスタートさせました。
家造りは、はじめのうちは順調でした。ただ工事終盤になると、当時勤めていた会社が急遽なくなってしまうなどの悪い事情があり、途方に暮れる時を過ごさざるを得ませんでした。何とか家は完成したものの、無職でローンが始まるという、思い描いていた華やかな湘南生活の始まりとは真逆の崖っぷちでスタートしました。
おかげで何にでも感謝できる心は養えたのですが、とにかく先だつものもなく、このままではまずいなと思っていた矢先、ふとSNSの記事で鎌倉R不動産の前身、稲村ヶ崎R不動産のスタッフ募集を知り、応募して採用となりました。つまり、R不動産と共に湘南生活を送っています。
ある日のサザンビーチ。訓練中の消防隊員たち
鎌倉R:実際に住んでみてどうですか?
torii:茅ヶ崎には素敵なところはたくさんありますが、正直なところ周辺の藤沢市や鎌倉市に比べれば、田舎まちだと住んでみて思うのです。結果的にはその田舎さが良いのですが、小さなまちながら文化として音楽シーンを牽引してきた人々(加山雄三さん桑田佳祐さん)や、宇宙飛行士の野口聡一さんなどの優秀な人を輩出し続けているという不思議な側面があります。
それから、茅ヶ崎の東海岸や中海岸周辺にブレッド&バター、サザンオールスターズの桑田佳祐さん、荒井由実さんなどが集まり、彼らが象徴となり湘南茅ヶ崎のイメージが、より数々の伝説とともに昇華されていったのだと。それ故に、他のエリアの方と住んでいる場所の話になると、茅ヶ崎って「おしゃれ」ですね、と言われる事が多々あります。
多くの著名人を生んだ茅ヶ崎ですが、ひとつの伝説的建物があります。いや、過去形となりますが、1965年に開業した、加山雄三さんをはじめ、茅ヶ崎の文化を造ってきた方々が出資したパシフィックホテル茅ヶ崎(現:パシフィックガーデン茅ヶ崎の場所にあったホテル)です。
開業当時まだ僕は産まれてもいませんが、設計は江戸東京博物館でもおなじみの菊竹清訓(きくたけきよのり)氏。今はその面影はありませんが、狂気を秘めた建築家と言われた人の独創的な形をした作品が、あの位置にあったことを想像すると。また、加山雄三さんらの圧倒的カリスマの存在により、メディアにもたくさん取り上げられたものと思います。それ故、団塊の世代くらいの方々を中心に茅ヶ崎=(イコール)海、茅ヶ崎=湘南の形が出来上がっていったものと思います。
近年ではSuchmos(サチモス)など、その系譜は途切れることはありません。駅近くの神社にひっそりといる神様のお陰なのか、気候風土なのか。それとも茅ヶ崎市の形は、鳴いているひよこの様で、新たに生まれ巣立っていきやすいという秘めたパワーを持ったスポットなのでしょうか。少なくとも、20年くらい地に足を付けて住まないと良さが伝わりにくいのかもしれません。
茅ヶ崎の北側にある「熊澤酒造」はお気に入りスポット
鎌倉R:普段、よく行く場所はありますか?
torii:僕の妻の実家の近くに、湘南唯一の酒造があります。いつもはパンを買いに行き、特別な日には家族で和食を食べにと長年通っている場所で、鎌倉R不動産やreallocalのサイトでもたびたび紹介させていただいている「熊澤酒造」さんです。
妻が大学生の頃、桶場と呼ばれる倉庫を改修して造られた、クラフト作家が集まるギャラリー「OKEBA」ができました。向かいの団地には、当時まだ珍しかったDIYできる賃貸物件が誕生したそうです(現在でも賃貸されています)。そんな面白さを求めて、素敵な人たちが何もないと思っていた自分の家の近くに集まりはじめ、一体なにが起きているのだろうかと、当時の妻は思ったと言っています。
「熊澤酒造」は茅ヶ崎に行くならぜひ、立ち寄っていただきたい
torii:そんな「熊澤酒造」さんでは、8年ほど前にビール片手に歌いまくる結婚式をさせてもらいましたし、毎年秋になれば、これまたビール片手に歌いまくるオクトーバーフェストが開催され、参加させてもらっているなど、歌と酒と茅ヶ崎の文化がここにも根付いているんだなと感じました。
また個人的にびっくりした茅ヶ崎市の良いところとして、「自然環境評価マップ」というものを市が公開しているのです。これは他の市ではあまりないようで、市内を76か所に区切り、樹林、草地、水辺、里地里山、海岸、農地の6つの土地利用項目として分類し、どれだけ自然環境としての評価が高いかもしくは希少生物がいるかなどを示すものです。
このマップを頼りに、よく川に行きます。別に泳ぐわけではありません。網と虫カゴ、図鑑をもって川に行くのです。40近くの男が。流石に一人では気が引けてくるので娘を連れていきます。明らかに娘が飽きてきているのに父親は一人ザリガニや魚を取っては観察に没頭している訳です。
僕はこのマップが好きすぎて、市役所に冊子が無いかを問い合わせたのですが、すでに配布は終了しているので自宅のプリンターでデータをダウンロード、印刷し丁寧にファイリングしました。
※茅ヶ崎市「自然環境評価マップ」概要版(PDF)
これにも似たR不動産的、物件評価マップを作成し、提案をしていけたらいいなと思う今日この頃です。
また、そんな川好きからすると、市内に圏央道の入口ができたことは大きい要素でした。神奈川県の圏央道は、相模川に沿う形で北に伸びていて、そのまま北上すれば、多摩川、入間川などの一級河川とも交わることができます。その支流は特に、小川探検のスタート地点としてはもってこいです。
茅ヶ崎の海の家のラーメン。このゆる~い感じが好き
鎌倉R:住んでみて、どんな変化がありましたか?
torii:今までは建築の本ばかりでしたが、図鑑や生物の資料が同じくらいになってきました。
また、海の家が営業する時期になると、朝から早起きして出かけます。良い感じにストレッチしたら海の家でラーメン食べながらビールを飲みます。こんなに幸せで良いのか、と思えるくらいの贅沢さを感じました。
茅ヶ崎の山側。赤羽根の風景は南側とはまた違っていい
鎌倉R:もし引越すとしたら次はどこに住みたいですか?
torii:茅ヶ崎の海側の良さ、面白さはメディアを通じて全国区でありますが、面白さの飽和状態となってきた面が近年特にあるように感じます。海周辺の開発による人口の密集により、ゆとりある風景は失われつつありますが、茅ヶ崎のさらなる面白い場所としては、いわゆる山側ではないかと思います。
そもそも、鎌倉、逗子、葉山はすべての場所ではないですが、海と山との距離が近く、どちらも楽しむことができます。しかし藤沢や茅ヶ崎は、はっきりと海か山かを選択しなければなりません。
のどかさに惹かれるという茅ヶ崎の赤羽根の風景
torii:山といっても、茅ヶ崎は全体的に平坦なので丘程度ですが、個人的に好きなのは茅ヶ崎市の赤羽根や堤周辺の広大な畑風景が広がる場所あたり。その広大な畑の景色を眼前に臨むことができる里山のふもとに一列だけ家が並んでいます。これらがまた素敵な家が多いのです。そのポジションにもいつか住んでみたいなと思ってしまいます。
夕日の時間も美しい湘南茅ヶ崎
鎌倉R:これから、このエリアに住みたいと思っている人にひとこと!
torii:いろいろな場所で開発されているところを目にしますが、まだまだ茅ヶ崎には埋もれている物件は多々あります。全部を満たしてはくれないかもしれませんが、目には見えにくい文化を味わいにいらしてみてはいかがでしょうか。
*R不動産の兄弟サイト「real local湘南」では、湘南の居住、働き方、お店などに関するローカル情報を紹介しています!