column 2017.10.12
 
Rトピックス

衝撃的一言と、稲村ヶ崎が放つ魔性をまとい、次なる冒険へ

小松 啓(鎌倉R不動産/鎌倉R不動産株式会社)
 

稲村ヶ崎R不動産を始めて9年。この度、鎌倉R不動産になりました!

「どうも多くの人は、鎌倉・湘南に移住しない言い訳を探しているのではないか」という、なんとも挑戦的な一言から稲村ヶ崎R不動産はその活動を開始していた。当時まだ東京に暮らしていた私にとってギクッとさせられる強烈なインパクトであった。それ以前は観光で遊びに行っては、いつかは鎌倉に暮らしてみたい。そんな生活に憧れるなぁ、と、ぼんやり感じていただけだったが……。サイト立ち上げの時期、私コマツは東京R不動産に所属していた。

稲村ヶ崎R不動産の創業者フジイはとても飄々とした雰囲気で、東京Rのオフィスにひょっこり現れたかと思えば「こんにちは! 鎌倉・湘南エリアでR不動産やらせてもらいますっ!」と言った具合で、私からは自由人としか言いようがないというか、ある意味鎌倉らしさとはこういうことかと、あっけにとられたのを記憶している。

そして東京から稲村ヶ崎R不動産をチラチラ見ていたのだが、そこに表現されている物件や引き渡し後のレポート記事からは、私の想像を超えた鎌倉のリアルに触れることができた。これは私だけではないと思うのだが、一般に、鎌倉・湘南と聞くと、どこかセレブ感または文化度の高い印象を持つ。もちろんそれは一定量あるものの、稲村ヶ崎R不動産で扱う物件はある意味普通。でも、行けばわかる。この土地特有の魔性が。そのありのままを受け入れつつ工夫して暮らし、あとは人が集まってみんなで笑っているとそれで十分である。そう感じているし、実際これまでそんな人たちを物件とマッチングさせてきた気がしている。

もちろん、かっこいい建物も紹介している。著名な建築家による設計で、しかも海が見える、といったような。そうした物件は建築好きであれば、建物でかっこいいのに、その上立地も魅力的という、もうこれはずるいというしかない。事実、東京R不動産に居た頃から、稲村ヶ崎R不動産が紹介するこうした物件に、ただただ嫉妬していた。

気がつけば、稲村ヶ崎へ向かっていた

東京R不動産を離れ、しばらく某設計事務所で作業員をしていた私は、ひょんなきっかけから、稲村ヶ崎R不動産のドアを叩くことになった。気づけば稲村ヶ崎に来て丸5年が経つ。私にとって稲村ヶ崎R不動産は2拠点目のR不動産である。私がこの5年間、稲村ヶ崎R不動産で目指していたことはひとつ。自分らしく、稲村らしい仲介をすることだった。

「稲村らしい仲介」とは何なのか。東京R不動産との違いは何か。そして私はこの違いをどう表現すべきなのか。それを考え続けた5年間だったわけだが、振り返ると面白い物件と面白いお客様から教わり続けた年月のように感じる。物件は癖が強く、購入するにはハードルが高いものもあり、不動産の調査を進めるのも一苦労。それでもそれを凌駕する圧倒的な物件とそれに共感する人々に出会えた。物件ごとに物語があり、そのストーリーが濃密であると、これらのハードルは越えることができる。そうした積み重ねの中で、私は徐々に稲村ナイズドされていったような気がする。

普通の概念を壊す稲村ヶ崎R不動産のリアル

稲村ヶ崎R不動産は鎌倉・逗子・葉山を中心とした、住宅系の不動産を中心に取り扱ってきた。海あり山あり、江ノ島、歴史的神社仏閣、江ノ電などなど、さまざまな自然や文化がある中で、東京から飛び出した文化人やアーティスト、クリエイティブ系の人々が集まる。彼らがこのエリアに残された住宅や別荘にアイデアを加え、楽しく暮らしている風景をあちらこちらで目にすることができる。

私はこのエリアに遊ばれているかのように、これまでの自分の固定観念を心地よく壊してくれる仲介をお手伝いし続けた。「普通」という概念を壊してくれる、そんな魅力が鎌倉にはある。一筋縄でいかないこともアイデアと工夫で軽々と壁を超えていく現実が、ここには確かに存在する。

コラム「鎌倉育ちの家探し」ここでは地元目線での物件探しの割り切りや、生活の優先順位などに気づかされることが多かった。

とりわけ、売買案件では物件探しのヒヤリングから始まり、この過程をお客様と一緒に面白く乗り越えていくことが稲村ヶ崎R不動産の特徴だと思う。つまり、ひと組のお客様との付き合いが長いのだ。中には住み替えなどで1年以上に及ぶお付き合いになるケースもある。

建築へのめざめ

これまで不動産仲介一筋で走ってきた稲村ヶ崎R不動産だが、不動産仲介を通じて得られた、深いところを理解し合えているお客様との付き合いが、物件引き渡しで完結してしまうことに歯がゆさを感じるようになっていた。改装や新築、そういった場面でも私たちなりにもっと役に立てることがあるんじゃないのか。

そこから稲村ヶ崎R不動産はまた、建築設計及び施工もできる組織をめざすようになっていく。具体的にはフジイは建築科に通う大学生になり、コマツは資格試験勉強に励みながら仲介を続ける。さらに、建築畑での経験豊かな高橋を招いて、建築部門がスタートした。建築部門ではお客様の溢れるアイデアをベースに、面白い空間が生み出せるようになっている。

コラム「中川家改造計画

また同じ頃、鎌倉・湘南居住を実際に体験していただくことのできる新しい賃貸の形として、「マイクロステイ」というプロジェクトもスタートさせた。東京に自宅がある状態で、一週間の鎌倉試し住みができれば移住のハードルを下げることができるのではないかという考えがもとになっている。

コラム「マイクロステイ

こうして私たちには、古い建物や面白い立地に対して、空間を提案する体制が整ってきた。こうした中で、次なるステージがやってくる。私たちの、鎌倉の風景に貢献してきた(と信じている)活動は、このまちを俯瞰してみると、わずかな点でしかない。この動きを進め、私たちが気に入っている鎌倉の風景を留めるにはもっと強くなる必要がある、と考え始めた。

奇跡の出会いから第2章「鎌倉」へ

ここからがミラクルの始まり。鎌倉で数々の面白い活動を進めてきた、面白法人カヤックの柳澤さんから「カヤックで不動産機能を持ちたいので一緒にやろう」という提案が。これに伴い私たちの冒険の旅は、いよいよ第2章に進むことになる。
ちなみに、実は、不動産屋を始めようと思ったフジイが最初に相談し、東京R不動産と出会う橋渡しをしてくれたのも、柳澤さん。それがきっかけで稲村ヶ崎R不動産が出来たという経緯がある。

そしてこのタイミングで冒険の舵取りはフジイからコマツへとバトンタッチされることになりました。これまで以上に面白い物件を探し出し、想像を超えるマッチングを加速させ、“鎌倉暮らしの価値を上げる”活動に邁進してゆきます。

冒険は第2章へと進みます。サイト名も「稲村ヶ崎R不動産」から「鎌倉R不動産」へ。これは僕らが「分かる人だけに」というマニアックな魅力を表現した稲村ヶ崎から、一定の成熟期間を経て、満を辞して踏み出した決意です。私たちは胸をはって、声高らかに言い続けます。都心での住み替えに、鎌倉を選択肢に含めない理由はあまりないのです、実は。そんなことを言い続けているうちに、鎌倉はもっと面白いエリアになっています。

今後とも稲村ヶ崎改め、鎌倉R不動産をよろしくお願いいたします。

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