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2026.3.31
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街を楽しくする 場所の自由 作戦アリ

dig kamakura 建築トーク【前編】

鎌倉R不動産
 

地鎮祭を終え、ついに建築が始まったdig kamakura。

実は2023年の秋頃からはじまっていたこのプロジェクト。設計を依頼したVUILD株式会社の代表・秋吉さんと、鎌倉R不動産の代表・野津、ディレクター・小松の3名で着工に至るまでのストーリーや思いを語ってもらいました。

地鎮祭の後、鎌倉R不動産でじっくりと語り合っていただきました。写真左からVUILD株式会社の代表・秋吉さん、鎌倉R不動産の代表・野津、ディレクター・小松

――VUILDに設計を依頼するきっかけとなったのは、2023年の「都市と循環」とのことですが。

野津:2023年12月に京都で開催された「都市と循環」というイベントのトークセッションで、秋吉さんが登壇されていたのを、僕が最前列で聴いていたのがきっかけのひとつでした。そこで、「建築の民主化」というキーワードで建築のプロだけでなく、手法や構造をデザインすることで誰でも建築に参加できる、みんなの建築の話をされていたのが印象的でした。

というのも、当時は、僕の自宅を改修し終わった時で、家族と一緒によく現場に行き、仕事上でも懇意にしていた工務店と密にコミュニケーションを取りながら進めさせてもらってました。でも一方で、こんな進め方って多くの人にとってはできないことも感じて、いわゆる建築の工程とそこを使う人たちとは、どうしても断絶してしまうのだなという実感があって。そんな時に、秋吉さんが「華奢な僕でも女性でも、建築現場にも参加して一緒に建てられるんです」と写真を見せながら話されていたのは、こういう建て方がもっと広がるといいなと思ったんです。

それがきっかけで、dig kamakuraの建築は、秋吉さんにお願いしたいと思ったんです。秋吉さんが鎌倉R不動産で住まいを見つけて、鎌倉に住まれていた、ということも大きかったですね。

小松:僕にとっては、メディアで見るVUILD代表としての秋吉さんと、近所でよく会う人、という2つの側面がありますね。鎌倉近辺でお客さんを待ってると、散歩している秋吉さん家族となぜか偶然出会う。身近であり最先端でもあり、という存在でした。

――そんな関係性があって、dig kamakuraの設計の依頼に至ったのですね。秋吉さんはどんなお気持ちでしたか。

秋吉:単純に嬉しかったですね。プライベートな関係性の中から依頼をいただいたという事と、当時、ちょうど僕も鎌倉R不動産の仲介で物件を購入したばかりで。dig kamakuraの敷地も毎日通るような場所だったから、自分が住む街に腰を据えてコミットして、建物を作ることで参加できるのは、一番やってみたかった事でもありました。

野津さんからプロジェクトの打診をもらった時に、「みんなの不動産」ができないかという問いかけがあったんです。それを鎌倉駅前の商業テナントビルで考えた時に、人や経済の循環がキーワードになるんじゃないかと。

地鎮祭の記念にいただいた模型を見ながら。

――設計提案をしていただいた際に、建物としての機能を満たす事はもちろん、人や商いの循環を目指した運営のプログラムにも切り込んだご提案に驚きました。

秋吉:1フロア約50平米、屋上つき2階建ての建物なんですが、例えば商いをやりたい人が、まずは屋上で数日ポップアップでトライできる。軌道に乗ってきたら1階で小規模に借りる。次は2階の広い店舗にステップアップして、最終的には御成商店街や他の場所に巣立っていく。鎌倉R不動産が自ら不動産を持って、商いの成長を支援して育てていく、みたいなストーリーにピンときたんです。

一方で、物質的な意味でみんなで作るのは、都市部の準耐火建築物という条件からは難しいけれど、例えば、外壁の木材をみんなで塗装する風景を街の人が見ている、という光景は意味があるんじゃないかと。

経済的な側面からも、クラウドファンディングを通じてみんなからお金を募ったり、テナントとして出店することで、みんなの不動産に参加することができる。関わりしろがたくさんあるということが重要なんじゃないかという気がしてます。

野津:敷地は鎌倉駅西口から徒歩2分ほどの商店街の真ん中という場所だから、建てている最中も建った後も、見た人が家に帰ってから自然と話題にされると思ったんですよね。建築予定地の開放もそうだし、建物の外壁に古材を使うのも、きっと話のきっかけになる。いろんな人がいろんなレベルで話題にしてくれて、「あの古材のところ」とか「あの屋上つかえるところ」とか、それぞれの呼び方で呼んでくれればいいので、「dig kamakura」という名前は浸透しなくてもいいと思ってるくらいです。

小松:商店街がある御成通りという場所は駅の反対側の小町通りと比べて、かつては地元の生活のための商店街だった雰囲気が残っている場所。自分も参加しようと思えばできそうな感じ、消費するだけからもう一歩突っ込んで、鎌倉の何かに触れる体験が出来そうと思わせる、絶妙な場所なんですよね。

――自分が住んでいる街の、駅前の商業地でのテナントビルという条件でしたが、建築の意匠、構造形式はどのように検討されましたか。

秋吉:鎌倉に住んで散歩していると、庇が出ていて、外壁が木の板張りで、銅板で屋根が葺いてあって、という昔ながらの街並みが残っているのをいいなと思っていました。ところが、ここ6~7年で、立て続けに古い建物が解体されて、郊外にあふれているようなサイディング貼りの建物に建て替わってしまった。そんな中で、新築で何ができるかを考えました。

ちょうどその時期に、VUILDと鎌倉R不動産のメンバーで、鎌倉の室町時代に建てられた禅宗様の建築物を内覧できる機会がありました。事前に写真で見ていた時の印象はダースベーダーみたいな重々しくていかつい感じ。ところが、実際訪ねてみると、すごくキュートだった。コンパクトだし、装飾は繊細で曲線が使われていたり、可愛げのある建物だった。

その体験にも影響を受けて、鎌倉らしさを感じさせる要素として、垂木が支える庇、反り屋根などは採用したいと。構造的には、梁を曲線にしてずらして並べることで、木造でもスパンを飛ばすことができるし強くなった。これは、禅宗様の建物にも使われている海老虹梁に近い形です。

新築だけど、出来上がった時にピカピカの新品っぽくない風合いを目指して、外壁材は建設現場の足場材を再利用する案に落ち着きました。その前には、能登の被災してしまった建物の古材を利用する案も検討しましたね。現代的な商業空間ということで、耐火や経済性などの要件の中で、昔からそこにあったような風合いをどこまで再現できるかは、結構考えましたね。

庇の形状は反り屋根を採用。外壁は古材を利用し、昔からそこにあったような風合いに。(パース提供:VUILD株式会社)

――材料の循環という切り口では、鎌倉で取り壊されてしまう建物の材料を引き取って使う案もありました。

野津:そういうことが出来たらいいなと。でも、それを考えはじめると、取り壊されそうな建物ばかりを探すようになってしまい、それは違うなと。そういった流通システムがまだない中では、ちょっと難易度が高かった。最終的に、たまたまVUILDにストックされていた古い足場板に落ち着いたのも、みんなの不動産っぽいというか。あまり作る側がメッセージを込めすぎても、使う人にとっては重いのかな、という気もします。

小松:ちょっと話は脱線するんですけど、不動産の手続きの中に、「解体証明書」の発行というのがありまして。土地を更地にして建物の滅失登記をする際に必要な書類なんですね。で、その一つ手前に、「これから壊します申請」みたいなものがあれば、完全に壊されて捨てられてしまう前に、しかるべき人が引き取って活用することができるかもしれない。市民や学生が解体体験する、なんてこともあり得ますよね。

秋吉:鎌倉として、この町にはまだまだ使える素材があって、文化的な価値のあるものが解体されてゴミになるのを防ぐ取り組みを行政などと連携したりして、できるといいですよね。

さらには、ストックした材料をリノベーションなどで活用できる状態にすることも重要です。作り手も新しいものを使った方が、安くて楽だ、という見方が優勢になりがちだから。

――建築業界では省エネ性能の高い最新鋭のものを使う事が推奨されて、行政も補助金を出したりしていますが、古材を使うことで歴史的・文化的な価値を認めながら、資源として循環させられる仕組みができたら面白いですね。

小松:環境、省エネ的な価値観から、文化的な価値観にスライドするイメージですね。例えば、鎌倉の雨風、潮風にさらされていい感じに経年した外壁には、鎌倉で作られたという文化的価値があるような気がします。そういった切り口の発見は、もっとしていきたい。

秋吉:今は、土地や建物の所有者の判断だけで建物を壊せてしまう。その前に一つ手続きがあるだけで、意識が変わるんじゃないでしょうか。本来、街並み自体が観光資源のはずなのに、だんだん、観光スポットの点と点だけしか魅力がなくなってしまう。それをつなぐ線である街並みが面白くなくなりつつある。

小松:鎌倉には人力車がたくさん走ってますが、彼らはその道のりで鎌倉感のあるルートを本当によく知ってます。それが、観光スポットからスポットへの直行直帰になってしまう、みたいなことですよね。

秋吉:古い街並みを残すだけでなく、後世に向けて文化的な価値がありそうなものを作ることも大切です。今の鎌倉の文化的な価値があるとされているものは、何百年も前の世代が作ったもので、それに対し、ここ100年くらいでそれに値するものを作れたのか、と。その観点も大事だと思います。

建築プランについて話しつつ、dig kamakuraプロジェクトの始まりからを振り返る。

【後編へ続く】

■お知らせ:秋吉さんと小松によるdig kamakura建築紹介と御成町まち歩きツアーを開催【6月28日(日)10時~、事前申込制(有料)】

当日は、秋吉さんにdig kamakuraの建築について現地で解説いただきます。開催日の6月28日(日)は建築途中の段階である予定ですが、そのようなタイミングであることも貴重なツアーになる予感が。また、近くにある別のVUILD設計の建造物もツアー予定です。
建築ツアー後は、小松がdig kamakura近隣の御成町を中心にまち歩きツアーをします。ちょっとマニアックな、「ディグる」視点での秋吉さんと小松による貴重なツアー、是非ご参加ください!!

申込はこちらのクラウドファンディングのサイトからお願いします
https://motion-gallery.net/projects/digkamakura
ツアー以外にもdig kamakuraとつながりを持ちながらプロジェクトを応援できるリターン品などもございます。応援よろしくお願いいたします!

秋吉さんと小松によるdig kamakura建築紹介と御成町まち歩きツアー、お楽しみに!!(写真右:撮影 八幡宏)

ゲストプロフィール

秋吉浩気さん
VUILD株式会社 代表取締役CEO
https://vuild.co.jp/

VUILDは「いきるとつくるがめぐる社会へ」をVISIONに掲げる建築系スタートアップです。デジタルテクノロジーを活用した建築設計・内装設計から、特殊形状の什器や内装の制作・施工までを行い、建築という付加価値の高い一品生産物を誰もがつくることができる「建築の民主化」を実践しています。

主な受賞歴にUnder 35 Architects exhibition Gold Medal賞(2019)、グッドデザイン金賞(2020)、Archi-Neering Design AWARD 2021 最優秀賞 (2022)、Archi-Neering Design AWARD 2023 最優秀賞(2024)、みんなの建築大賞大賞(2024),日本建築学会新人賞受賞 (2025), iF Design Award Gold Award(2025), AACA賞(2025)

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